UNLABELED | 人間とテクノロジーの幸せな関係は見つかるか

CHALLENGE

PROJECT

UNLABELED

人間とテクノロジーの幸せな関係は見つかるか

情報ネットワーク社会の現代。近年の監視カメラやドローンの普及、監視映像データの蓄積、映像からの物体検出技術の発展に伴い、我々の行動は常にAIによって監視されているとも言える。そんなAIの「目」から身を守るというコンセプトのもと、立ち上がったプロジェクトが「UNLABELED」。AIに人として認識されにくくなるカモフラージュを衣服にしたプロダクトは、世界中で大きな話題を呼んだ。プロジェクトへの想いについて、中心メンバーである、田中、小柳、眞貝、川島に話を聞いた。

AIと社会の
新しい関係を築く。

INTERVIEW

  • 田中 直基
    田中 直基
    CREATIVE
  • 川島 梨紗子
    川島 梨紗子
    CREATIVE
  • 小柳 祐介
    小柳 祐介
    ART
  • 眞貝 維摩
    眞貝 維摩
    CREATIVE
INTERVIEW /01

日常での違和感をアイデアにする。

━━ プロジェクトのきっかけについて教えてください。

田中田中

そもそもは、共同でプロジェクトを進めているDentsu Craft Tokyo / 慶應義塾大学SFC准教授の徳井さんと僕との雑談からはじまったんです。最近では、AIが性別や年齢を判別できるようになっていますよね。でも、人を見た目だけでジャッジすると、その人がどういう存在なのか、という本質的な部分がおざなりになってしまう。多様性の時代だと言われているのに、それっておかしいよね、と話していたのが、アイデアの発端です。

━━ 雑談から生まれたアイデアだったんですね。

田中田中

はい。我々の所属している「Dentsu Lab Tokyo」での仕事は、個人的な思いから生まれることが多いんです。今回の場合は、「AI=絶対的な存在」と捉える社会に対する課題感が根底にありました。そんな折、論文をいろいろ見る中で画像に特定の模様を加えることでAIを騙すことができると知って。これを応用して、衣服をつくったら面白いんじゃないかと思ったんです。というのも、AIに関する問題意識の議論は、一部の技術者、見識者だけで完結するのではなく、ストリートレベルにまで伝わってこそ、だと考えていて。ただの啓蒙活動にとどまるのではなく、もっと身近な、プレイフルな方法を模索した結果、ファッションというアウトプットが最適だと思いました。

川島川島

UNLABELEDがモチーフにしている「カモフラージュ柄」も、元々は戦場での実用目的が起源で、ファッションカルチャーにおいても反抗や反戦の姿勢を示す衣服として着用されるようになったという背景があるんですよ。

━━ 面白いです。そこから、どのようにアイデアを実装していったのですか?

川島川島

私は2019年の入社なのですが、入社前はSFCでメディアアートを学んでいた縁もあり、慶應義塾大学SFCの徳井研究室に所属する学生にもご協力いただきました。最初の目標はMedia Ambition Tokyoへの出展だったのですが、その際には週に1度ほど集まって話し合いながら、少しずつ形にしていきました。

━━ “UNLABELED”というネーミングは、川島さんがされたんですよね。

川島川島

はい。AIが人をラベリングしていくものだとすると、「AIによるラベリングから逃れる」というのが、今回のコンセプトだと考えました。ラベルを貼られていないという意味の“UNLABELED”というワードを選びました。いずれファッション領域で展開していくことを想定し、「どのレーベルにも属さない」という独自性を持ったブランドであるという意味も込めています。名前が定まったことでビジョンが明確になったし、つくりたいものの具体像もより解像度が上がった気がします。

INTERVIEW /02

電通というラベルも剥がして活動する。

━━ ファッションブランドとコラボして商品開発も行なっていますよね。それだけにデザイン性はすごく重要だったと思うのですが、小柳さんはアートディレクターとしてどのようなことを意識していましたか?

小柳小柳

もっとも心掛けたのは、良き通訳者になることでした。そもそも僕たちはファッションのプロではありません。作法もよくわからない。加えて、今回はAIに生成してもらった画像を利用してカモフラージュをつくっているので、その技術に関する説明も必要になります。僕たちの目指すビジョンを実現するためにどうすればいいのか。さまざまなステークホルダーが関わるプロジェクトなだけに、幾度も会話して相互理解を深めていきました。

田中田中

AIが生成するデザインって偶発的に生まれたものなので、言ってみればすごくエキセントリックな感じなんですね。それを大勢の人が着たくなるデザインにきちんと落とし込む役割を担ってくれたのが小柳でした。

小柳小柳

めちゃくちゃ大変で地道な作業が多かったですけどね(笑)。AIが生成する画像が600×600ピクセルとそこまで大きくなくて。テキスタイルとしてどう実用化するのか、時間をかけて作成しました。

━━ 眞貝さんはプロデューサーとして、全体を見渡しながらプロジェクトを進めていく必要があったかと思います。どのようなことを心掛けて取り組んでいましたか?

眞貝眞貝

電通という大きな看板を掲げてしまうと、広告会社のクリエイティブのひとつと捉えられてしまって活動自体が矮小化されてしまう危惧を感じていました。それは非常にもったいないこと。だから、UNLABELEDというブランドを可能なかぎり独立した存在として紹介したいと考えていましたね。実際、今回のプロジェクトは、海外からの問い合わせがとても多いです。本当は海外でも本格的に発表できる機会をつくろうと考えていたのですが、新型コロナウイルスの影響で叶わなかったのが残念です。

  • カモフラージュをプリントしたフーディ・クルースウェット

  • スケートボード、タブロイドなども制作

INTERVIEW /03

ゼロから生み出すことの楽しさ

━━ 広告ではなく、ひとつのブランドをつくっていく点において、社内ベンチャー的な側面があったように思います。0から1を生み出す取り組みだけに、やりがいも格別だったのではないでしょうか?

小柳小柳

やりがいという点で言うと、どちらにも楽しさがあります。クライアントの課題を解決することも、すごく達成感のある仕事なので。一方、UNLABELEDは製造も展示も告知もすべて自分たちで手を動かして取り組まなければいけなかったので、学生の頃に戻ったような手探り感があって面白かったですね。

眞貝眞貝

僕が以前所属していた部署は、各自が専門性を活かして働くスタイルだったんですね。僕はデジタル領域でさまざまな案件に携わりつつ、自主的なプロジェクトにも多く取り組んでいたのですが、ある頃から戦略立案から実装まで自分たちでやるからこそ生まれる価値があるなと考えるようになったんです。その点、UNLABELEDは、すごくやりがいがあるなと感じる瞬間が多いかもしれません。

川島川島

私自身、すごく貴重な経験ができている実感がありました。既存の広告プロジェクトに参加して経験を積みたいなと思う一方、自分のつくりたいものをピュアにつくる楽しさを忘れずにいたいです。

  • 2021年渋谷で初の新作展示会を開催

  • 作品を展示するだけでなく販売も行った

  • 展示会でカモフラージュを体験する様子

INTERVIEW /04

課題解決だけでなく、問いを社会に投げかけたい

━━ このチームは自分たちの「やりたいこと」を大切にしているのですね。

田中田中

今回の試みは、ビジネスとして成功することだけをゴールにしているわけではないんです。もちろん、いろんな企業コラボのお話なども頂いていて、ありがたいと思いつつ、全部をビジネスにつなげるのも窮屈だなと思うんですね。短期的な利益を求めるのではなく、長期的に社会に対して問いを投げかけられることを忘れてはいけないと思って、こうしたプロジェクトに取り組んでいます。

川島川島

私たちの生きる社会にとってテクノロジーは必要不可欠ですし、だからこそ、人間はこれまで半ば盲目的にテクノロジーを発展させてきた背景があります。ただ、これからは「人間にとって幸せなのか?」という視点でも考えていく必要があると思います。

眞貝眞貝

僕たちのようにデジタルやテクノロジーを軸にした仕事が多いチームだからこそ、社会に投げかけられる問いですよね。

田中田中

電通というと、企業の課題に対してクリエイティブで答えを導き出す会社だと世間では認識されていると思うのですが、そうしたなかで僕たちは率先して問いを投げかける役割を担っていきたいと考えています。

━━ みなさんの考え方はまさに「先駆者」的だと感じます。今年の採用コンセプトでもある「先駆者」についてどう思いますか?

小柳小柳

電通には、経験豊富な先輩がたくさんいて、基礎となる土台がしっかりしているからこそ、新しい世界を切り開ける先駆者たちがいます。さらに、既存の広告領域のプロから、新領域のチャレンジャーまで、いろんな人が混じりあう環境があります。こういったところから突然変異的に生まれる先駆者もいると思いますね。

田中田中

そもそも電通は、自分がやりたいことを、うまく仕事につなげていける会社だと思っています。自分が心から楽しい、やりたいと思うことを、仕事にしてしまう。そんなポジティブな意味での“公私混同”をやった上で、結果的に社会に利益を還元して、みんなに喜んでもらうことができる人こそが、先駆者なのではと思います。