データと構想で、事業の
「あるべき姿」を考える仕事
田中 仁一郎
- 入社年度
- 2025
- 学生時代の専攻
- 経済学
Q.入社前はどんな学生でしたか?
大学時代前半と後半で、まるで別人みたいな活動をしていました。前半は、視野を広げて幅広い活動に取り組みました。一年生から三年生の初めにかけて、教育心理学の分野で論文を書いたり、その後起業に挑戦したり、その延長線上で、ある企業の長期インターンに参加したり、と多くを経験することができました。
一方で、大学時代の後半は、自らの専門性を磨くことに注力しました。経済学の中でもよりデータや分析を扱う分野に軸足を移し、3年生の後半から4年生まではひたすら統計学、計量経済学の勉強をしていました。その成果を形にするために、卒業論文もかなり力を入れて取り組み、統計検定一級という資格も取りました。(最優秀成績賞での取得)
大学時代前半から後半へのシフトチェンジを決意した大きな理由は、長期インターンを経験する中で、「自分だからこそ出来ることって何だろう?」という壁にぶつかったことです。自分は当時責任者を任せていただいたことがあったのですが、多くの面で成長することができたものの、自分よりも他にもっとその事業に詳しい人がトップになった方がおもしろい事業が生まれそうなのに、などと思うことも正直あり、自分の強みがないと、自分がいる意味や存在価値が分からなくなってしまうというのを感じました。その中で自分の強みをもって仕事をしたいと思うようにもなり、何を強みにしようかと改めて考えたときに、「高校・大学受験では数学が得意だったな」とか「経済学の実証を見るのって面白いな」とか、そういった好奇心のことを思い出しました。その方向で自分の強みを作っていこうと思ったことで、一気に専門性を磨くことに注力できたことが自分の転換点かなと思っています。
少し別の話にはなりますが、自分は人生を通じて、「産業・官公庁・学問の「産学官連携」に何かしらの形でアプローチしていければ良いな」という気持ちが強くあり、元々は学問領域からアプローチをしていこうと思っていました。ただ、取り組んでいた学問と深く向き合う中で、学問領域から「産学官連携」にアプローチしていくにはかなり年月がかかってしまうことを少しずつ自覚しはじめ、「もう少し早めに社会に貢献していきたい」「学問に閉じずに社会との関わりを増やしていきたい」という気持ちが強くなっていきました。そのような経緯もあり、ご縁もいただくことができたので、学問の道には進まずに電通に入社することを決めました。

Q.電通ではどんなお仕事を
していますか?
今は、ある大手メーカー企業様の、事業変革、戦略策定を支援するような仕事をしています。その企業では、メーカーとしてのモノづくり以外にもいくつか事業を持っているのですが、そのうちの1事業において、新たなサービスの台頭などにより競争が激化しているという課題があります。その事業について、将来的にどこに向かっていくべきなのだろうか?という「あるべき姿」をクライアントのみなさんと一緒に考える仕事をしています。
具体的に言うと、企業様の事業責任層の方々と我々とで、「あるべき姿」をすり合わせるセッションを定期的に行っています。そのセッションに毎回仮説・論点を持っていくのですが、自分は5名ほどのチームの中で、クライアントとセッションする資料の一部を作る役割を担うことが多いです。例えば、「このパートは田中くん担当で書いてきて」という形で割り振られたパートに関して、企業様がどのような粒度の情報を求めているか、自分の資料を通じてどういう意思決定がなされることがゴールなのか、などを考えながら、何を伝えるべきかを意識して資料化するようにしています。
あとはそういった仕事以外に、MMM(「マーケティング・ミックス・モデリング」の略称。テレビCMやWeb広告などの施策が売上や投資対効果に与える影響を統計的に分析する手法)の仕事も携わっています。この仕事では、まさに学生時代に取り組んだ統計学が直接的に活きているなと感じます。

Q.仕事をするうえで、どのような
やりがいを感じていますか?
仕事の中では、具体と抽象をずっと行き来している感覚があります。「中期視点で事業のあるべき姿を決める」というすごく抽象的なことを考えるはずなのに、抽象的なことに関して責任を持って語るためには具体までちゃんとしっかりと理解しておかないと語れない。電通ではこの企業様のプロジェクトに長年伴走し続けてきているからこそ、この領域に関する具体的な知識が溜まっており、そうした環境の中で、具体と抽象を行き来しながら意思決定を推進していくプロセスそのものにやりがいを感じています。
学生時代にはなかった新しいスキルという視点でいうと、すごく視座が高まる経験をさせていただいています。元々学生時代に取り組んでいた統計学では、最終的にすごく具体に落ちていくため、「細かいことまで知っている」ということが強みになるのですが、ビジネスの世界で還元できる価値としては領域が狭まっていってしまうという見方もできます。一方今の仕事は、具体と抽象の行き来をしており、自分がこれまでやってきた分析について、高い視点からも俯瞰できるようになったというのが今の実感としてあります。自分はそれについて「柔と剛」という言い方をしているのですが、意思決定を推進したり物事を整理して価値をわかりやすく伝えたりする「柔」の役割と、一般的には少しハードルが高いと感じてしまうようなすごく細かい分析を進める「剛」の役割とがあり、自分はどちらにも取り組みたいなと思ってこの会社に入社しており、実際にどちらもバランスよく携われているかな、と思っております。

Q.これからどういった人財に
なっていきたいと
思いますか?
元々自分のビジョンとして考えていた「産学官連携」に携わっているかというと、まだそこは道半ばかなと思います。一方で、そこまで達する土台、足腰みたいなのはすごく鍛えられている感覚があるので、今の仕事は自分のやりたいことに繋がっているんだなという実感はあります。「産学官連携」を推進する人材になるためには、「柔と剛」の両方が必要となります。「産学官連携」においては、関係者が学者や大学、政府になりますが、要求される分析のレベルや厳密さのレベルがものすごく高い方たちなので、「剛」がないとまずやっていけない。ただ、民間企業という立場からアプローチをしていくのであれば、求められることは、意思決定を推進することやそれを社会実装へとつなげていくことなので、そのためには「柔」が必要。そのための基礎を、「柔と剛」の両面で磨いてもらえているなという感覚があります。
特に、この先にやりたいなと思っていることは、「EBPM(Evidence-Based Policy Making:エビデンスに基づく政策立案)」というテーマです。ざっくりいうと、政策の決定をデータドリブンでやっていきましょう、という方針で、政治領域で今まさに広がりを見せている領域です。こうした領域は、電通としても関わる余地があるのではないかと感じており、自身としてもこの分野に携わっていきたいと考えています。また、電通の主要事業であるマーケティングにおいても、もっともっと厳密な分析が求められる世の中になってくると思っているので、政治領域で先行して取り組まれているEBPMのノウハウを、今度はまた産業に還元していくような潮流に、自分も貢献できたらいいなと思っています。