R-1 受験生応援広告 | 既存の広告を超え、新しい広告のあり方にチャレンジする

CHALLENGE

PROJECT

R-1 受験生応援広告

既存の広告を超え、新しい広告のあり方にチャレンジする

2021年2月、渋谷スクランブル交差点に現れた「墾田永年私財法」という巨大な文字。そのインパクトの強さからSNSで一気に拡散された看板の正体は、「明治プロビオヨーグルトR-1」(以下、R-1)の広告だった。 “受験生あるある”で、世代を超えた共感を生んだキャンペーンは、新型コロナウイルス感染症感染拡大のなか、「孤独な時間を過ごす受験生をほっこりさせたい」という想いから生まれたもの。商品そのものを訴求することなく、しかし確実に商品の好意度を高めたチャレンジは、島津・加我・佐藤を中心とするチームから生まれていた。

正しい戦略こそ、
予想外の表現で伝えたい。

INTERVIEW

  • 島津 裕介
    島津 裕介
    CREATIVE
  • 加我 俊介
    加我 俊介
    CREATIVE
  • 佐藤 憲政
    佐藤 憲政
    BUSINESS PRODUCE
INTERVIEW /01

「おもしろさ」は、時代を超える

━━ 渋谷のスクランブル交差点に「墾田永年私財法」って、すごいインパクトですよね。SNSの累計リーチも2000万を超えて、話題になっていましたね。

島津島津

受験生がメインターゲットなのに、40代のおじさん3人が中心です(笑)。でも、受験生の気持ちって、今も昔も、そんなに変わらないと思うんですよね。「おもしろいと感じるものはきっと同じ」と信じてつくっているので、話題になってうれしいです。

加我加我

若い人向けの広告だからといって“若者っぽい”とか、“今っぽい”ことは目指していません。受験生の普遍的な感情に根差しながら、僕たちが「おもしろい=感情に響く/共感を生む」と思うものを信じて、SNSなどで若い人に広がることを狙いました。屋外広告というメディアは、昔からあるメディアですよね?でも、そこに商品の広告じゃなくて、“受験生あるある”を大きく打ち出したら、予想外のびっくりがあるんじゃないかって。

佐藤佐藤

40代の僕らが最新の流行を追いかけてしまうと、結局、おじさんっぽくなっちゃうからね(笑)。

━━ 「いちごパンツで本能寺」や「3は裏切らない」など、“あるある”のチョイスも絶妙です。

島津島津

もちろんおもしろさにはこだわりました(笑)。受験シーズンって、不安じゃないですか。ふと「自分は本当に受かるのかな」とか「ライバルに負けるんじゃないか」とか思う。しかもコロナ禍で迎える初めての受験だからこそ、せめて広告は楽しく肩の力が抜けるものにしたかったんです。

━━ 広告に載せるキャッチコピーは、どうやって決めたんですか?

加我加我

もともとはラジオ番組(「受験生は夜悩む Presented by 明治プロビオヨーグルトR-1」)をつくったのがスタートなんですよ。その番組の中で、リスナーから“受験生あるある”を募集して、リアルな声を集めました。

島津島津

その中から選んだ、リアルな言葉をコピーとして選んで、そのまま屋外広告にしたんです。なるべくおもしろくて、共感性の高いものを。

  • 電車内に掲出された”受験あるある”コピー

  • その他のコピーも、渋谷に多数掲出

INTERVIEW /02

「正しさ」があるから、できること

━━ このチームのやりとりを見ていると、楽しそうに仕事している感じが伝わってきます。

島津島津

ありがとうございます(笑)。でも、もちろん楽しさとかおもしろさだけで勝負しているわけではないですよ。

加我加我

当たり前のことですが、クライアントにおもしろいものを見せて、「これ、おもしろくないですか?」という提案はしていません。僕たちの提案には、いつも「正しさ」があるんです。

━━ 「正しさ」ってどういうことですか?

加我加我

広告としての表現開発の手前にある、コミュニケーション戦略における正当性とロジックです。今回は、「ふだん健康を意識しない若い人にR-1を訴求すること」が、仕事のゴールでした。それって、ふつうに考えると難しい。だから、唯一若い人がみんな体調を意識する「受験」という切り口を見つけたことが、最初の戦略でした。R-1という商品を、コロナ禍の受験生に寄り添う存在として訴求しようという提案をしたんです。

島津島津

先ほどお話ししたラジオ番組も、「受験生に寄り添う」という戦略があったからこそ生まれたアイデアなんですよ。

加我加我

そして、ラジオ番組で集めた受験生のリアルな声を、広告にすることで、世の中の共感を呼ぶ。ここまでの流れを事前にきちんと設計し、クライアントと合意していました。

佐藤佐藤

こういった戦略がベースにあったから、企画から掲載するコピーのチョイスまで、クライアントからNGはほとんどなかったんですよね。戦略がしっかりしているからこそ、表現に関しては、予想外のおもしろさを追求できました。

━━ クライアントに信頼されているポイントはどこなんでしょう?

佐藤佐藤

おもしろいけど、正しい。正しいけど、おもしろい。島津と加我、二人がいるからこそ、クライアントも安心していただいているのかなと思います。

島津島津

あとは、佐藤くんなら、アイデアを実現してくれるっていう安心感をクライアントに感じてもらっているのも大きいよね。僕と加我くんだけでは絶対に実現できないと思う(笑)。

━━ お互いを「〇〇くん」って呼び合っていることからも、仲が良い感じが伝わってきますね(笑)。

INTERVIEW /03

真逆の個性から生まれるグルーヴ

━━ 「おもしろさ」と「正しさ」。このバランスは、どうやって実現しているんですか?

佐藤佐藤

外部のアートディレクターを含め、全員が同世代だけど、仕事を進める上で大切にしているのは、結局「グルーヴ」なんですよ。

━━ 「グルーヴ」ってなんですか?

加我加我

企画やコピーの、どこをおもしろいと思うか、どこが正しいと思うか。その感覚の近さですね。例えば三人のなかで、誰か一人でも違和感があるものを、無理やり押し通す、みたいなことはしない。みんなが納得しながら進めている感じはありますね。逆に、誰かに気を遣うこともないですし。

━━ 同世代だから価値観が似ている、ということでしょうか?

島津島津

いや、そんなことはないですね。例えば、僕と加我くんは、じつは、趣味嗜好や考え方のプロセス、仕事以外の価値観はぜんぜん違う。むしろ、まったく逆といってもいい。

加我加我

共通点は、サッカー好きなことくらいかな(笑)。でも、普段からお互いを否定せずに会話を重ねているよね。

佐藤佐藤

打ち合わせの時の雑談も、長めです。仕事や無駄話や、食事の時間を通して、意図せずしてお互いの価値観を理解しているんだと思います。

島津島津

自分と思考回路が違う人ほど、話していて刺激をもらえます。「この人は自分の足りないピースを埋めてくれるな」とか、チーム内でそれぞれのキャラクターがわかってくると、自然とグルーヴが生まれるんだと思いますよ。

  • 街で発見した人から共感が広がり、SNSで拡散された

INTERVIEW /04

新しいチャレンジを、一案に込めて

━━ このチームでは、この仕事以外でも、R-1のクリエイティブに携わってきたんですか?

佐藤佐藤

そうですね。過去にもR-1を担当しています。これまでの実績があるのは、やっぱり強いと思います。一つひとつの信用を重ねてきたからこそ、斬新な企画でも実現できる。

島津島津

クライアントから信頼されているのは、佐藤くんの存在が大きいよ。

佐藤佐藤

僕はおもしろいことに巻き込まれるのがものすごく好きなんです。今回のように、実現できればおもしろい、ということがわかっていると、実現のハードルが高くて、楽しい。二人に「これをやったら、おもしろいと思う!」と無茶ぶりされても、僕は「無理です」とは言いたくないんです。すぐに、どうすれば実現するかを考える。そこに、ビジネスプロデューサーとしての楽しみがあると思っているので。

━━ 商品そのものを訴求しないで、“受験あるある”にフォーカスするって、改めてチャレンジングだなと思います。

加我加我

いわゆる「広告」とは、ちょっと違いますよね。商品訴求というよりは、ある種の「共有装置」と割り切って、みんなの共感を集めることだけに特化したのは初めてのチャレンジでした。でも、振り返ると、新しいチャレンジほど、自分の経験値として血肉になっているんです。結果が出たのはうれしいですが、今回のアプローチや考え方を次に生かしながら、次はもっと新しい提案ができるんじゃないかと思っています。

━━ 正しくておもしろい提案って、何案も思いつくんですか?

島津島津

いや、提案したのは一案だけなんですよ。

加我加我

僕たちは、戦略の正当性とロジックを下敷きにしているため、一案提案になることが多いかもしれません。たった一つの選択肢でも、そこに正しさとおもしろさがあることが前提ですが。それを積み重ねることが、信頼につながってくると思います……ね、佐藤くん!

佐藤佐藤

また無茶ぶりですね(笑)。