WE LEAGUE 立ち上げ | スポーツ×ビジネスで、社会のためにできること

CHALLENGE

PROJECT

WE LEAGUE 立ち上げ

スポーツ×ビジネスで、社会のためにできること

2021年9月、日本初の女子プロサッカーリーグである「Yogibo WEリーグ」が開幕した。掲げられたのは「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する。」という理念。そこには、「女子プロサッカー選手」という新しい職業の誕生によって、スポーツだけでなく、社会を変えていくという想いが込められている。電通は、マーケティングパートナーという立場ながら、リーグ立ち上げをサポート。チームを代表して、自身もサッカーをプレーしてきたという雨宮と中倉に話を聞いた。

スポーツを通して、
この社会を変えていきたい。

INTERVIEW

  • 中倉 あかね
    中倉 あかね
    SPORTS BUSINESS
  • 雨宮 嶺
    雨宮 嶺
    SPORTS BUSINESS
INTERVIEW /01

「女子サッカー選手」という新しい職業をつくる

━━ 女子サッカープロ化のプロジェクトがはじまったのは、2018年なんですね。

中倉中倉

はい。日本サッカー協会(JFA)から、日本女子サッカーのトップリーグをつくりたいという相談をいただいたのがきっかけです。私は高校生までサッカーをしていたこともあって、プロジェクトに参加しました。2019年にはJFA、Jリーグ、なでしこリーグ・クラブと共同で「女子新リーグ設立準備室」が立ち上がり、リーグ名やロゴを考えることはもちろん、リーグの理念まで、幅広く考えてきました。社外の方も含めてチーム一丸となり、全員サッカーみたいな感じでここまで来ましたね(笑)。

━━ 中倉さんにとって、サッカーってどういうものでしたか?

中倉中倉

小学生の時に初めてプロの試合を見に行き、「選手たち、かっこいい!」と思ってサッカーを始めたんです。選手たちに憧れて高校まで続けたものの、プロのサッカー選手になるという選択肢は自分の中になかったのが正直なところです。

━━ 「サッカー選手になりたい」という夢を、そもそも持てなかったわけですよね。女の子であるというだけで。

中倉中倉

はい。だから、WEリーグの構想段階でも、「プロサッカー選手が生まれることで、女性の職業の選択肢を増やしたい」という想いがありました。今、WEリーグの試合会場に行くと、選手たちが本当にかっこよくて。私が高校生の頃に見ていたら、サッカー選手になりたいと思えていたかもしれないと感じます。だから、ジェンダーが理由で夢を諦めることがないような多様性のある社会になってほしいというのは、私の中でも強い想いとしてありますね。

━━ 雨宮さんはいかがでしょう?

雨宮雨宮

僕も子どもの頃からサッカーをやってきて、今も社会人サッカーを続けています。「サッカー選手になりたい」という夢もあったし、サッカーを頑張ることで、人として成長できました。でも、この仕事を始めたことで、「女性であるというだけで諦めなくてはならない夢があったんだ」と気づきました。そこから、「ジェンダー平等」というテーマにも、自分なりに貢献したいと考えるようになったんです。

  • 「女性の可能性を拡張させる希望」というコンセプトでつくられたユニフォーム

  • 選手たちのディスカッションを元に開発されたWEリーグの選手クレド(行動規範)

INTERVIEW /02

みんなが共感できる理念をさがして

━━ 実際には、どのようにプロジェクトを進めたのでしょうか?

雨宮雨宮

僕は、まだ立ち上がってないWEリーグの価値をステークホルダーに伝え、ビジネスとして成立させることがミッションでした。「日本初の女子プロサッカーリーグ」が、サッカーという枠を超えて、どんな価値を提供できるか。今の社会課題をどう解決するのか。その先に、どんな未来を目指すのか。ステークホルダーに納得してもらうために、WEリーグの理念は不可欠でした。

━━ 中倉さんは、その理念づくりにも関わったんですよね?

中倉中倉

WEリーグとして、どんなメッセージを発していくべきかはすごく大きな悩みであり、大きな壁でした。実は、リーグの名称を決める時に出た“Women Empowerment”という言葉を直訳すると”女性活躍”に置き換わっちゃうんです。でも、”女性活躍”と言われると「すべての女性が活躍しないといけないの?」とか「そもそも活躍してるんだけど?」と感じる人もいると思います。また”女性”という言葉を選ぶことで、他の性を生きる様々な方にとっては遠い存在になるかもしれない。言葉の使い方って難しいなと悩みました。

━━ 確かに適切な訳語がないですね。

中倉中倉

”Empowerment”は、何かにパワーを与えることなので、女性が自分自身にパワーを与えることもそうですし、女性が起点になって、すべての人にパワーを波及していくという意味が込められています。最終的には女性が発したパワーで社会全体が良い方向に動いていくことを伝えたいのですが、いまだに適切な日本語が見つかっていません。”女性活躍”や”ジェンダーギャップ”と聞いた時に、人は何を感じるんだろうって。

雨宮雨宮

部署内のいろいろな年齢層の人を呼び止めてヒアリングしていたよね。

中倉中倉

「”女性活躍”という言葉をどう思いますか?」「”ジェンダーギャップ”を感じたことがありますか?」ってひたすら聞きました。

━━ 人によって感じ方はさまざまですよね。

中倉中倉

そのヒアリング結果をもとにディスカッションを重ね、「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」というWEリーグの理念が立ち上がりました。性別で分けるのではなく、「一人ひとり」という言葉を選んだこともポイントです。大変な仕事でしたが、今後100年、200年と掲げられるかもしれない理念を考える機会をいただけたことに、達成感と充実感がありました。

  • 2021年9月12日
    初代チェア岡島喜久子氏による開幕挨拶

INTERVIEW /03

サッカーが好きだから、がんばれる

━━ もともと好きだったサッカーに仕事でも関わることに対して、どう感じていますか?

雨宮雨宮

自分の人生において、こうしてサッカーに関われるのはとてもうれしいこと。やはり内側から湧き出るモチベーションが違うので。

中倉中倉

私は新入社員の配属の時からサッカー関連の仕事をしています。その中でも今回は女子サッカーに携われて、それも日本のトップリーグをつくるという日本の女子サッカーの時代を変えることに立ち会えたのは本当に感謝しています。

━━ 女子サッカーの未来をつくったわけですもんね。

中倉中倉

高校生の頃、2011年にFIFA女子W杯でなでしこジャパンが優勝して、そこから10年目の節目にあたる2021年にWEリーグが誕生して、ここから女子サッカーがさらに変わっていくんだという大きな流れに立ち会えました。かつての自分のように子どもたちにも夢を与える立場にいるのかもしれないと思うと、がんばるエネルギーになりますね。

雨宮雨宮

そういった個人的な経験は、エネルギーになりますよね。僕は優秀な選手ではなかったけど、それでもJリーガーを目指していたんです。夢があったから、どんな壁でも乗り越えられたという経験が、自分の中にありました。だから、WEリーグの理念には共感できましたし、ステークホルダーと話す時も、自分のエピソードを交え、僕の想いを乗せながらビジネスをつくることができた。

中倉中倉

理念をつくって終わり、では何も生まれない。そこに共感してくれる人がいないとビジネスはできないですよね。スポーツ局だけでなく、クリエイティブチームがアドバイスをくれたり、営業チームが一緒になってパートナーセールスをサポートしてくれたりと、総力戦でこの仕事ができ上がっているんです。

  • 2021年9月6日に行われた、パートナー企業との「WE ACTION MEETINGキックオフ」の様子

INTERVIEW /04

スポーツから、日本の社会を変えていく

━━ この仕事には社内外のさまざまな人たちが関わっていますが、どのように自分の強みを出していきましたか?

中倉中倉

私は、チームで一番年下だったこともあり、よく意見を求められました。「それは違うと思います」と意見することもありましたが、ちゃんと聞いてもらえる環境がありがたかったです。女性としての目線や若手としての目線など、とにかく自分が感じたことを正直に伝えていきました。

雨宮雨宮

僕から見た中倉は、自分の感覚や日常で感じていることをきちんと言葉にするんです。ジェンダーという課題に立ち向かうとき、正しい知識を持っていることも大事なんですが、自分の持っている想いや熱量がなければ、本質には迫れません。

中倉中倉

WEリーグは、「#これは新しい日本のキックオフだ」というメッセージを掲げています。さまざまなステークホルダーとともに、社会課題に取り組み、新しい日本をつくりたいという覚悟を表明しているんです。そのためには、まず、自分が感じたことを言葉にして伝えていきたいと思っています。

雨宮雨宮

いちスポーツリーグであるWEリーグですが、スポーツには、社会を変える力があります。まずはWEリーグ内のクラブ・選手・パートナーを発端に、その他のスポーツ団体が変わっていく。さらに、スポーツの枠を超え、メディア、行政等が集う場となれば、WEリーグはサッカーリーグを超えた価値を生み出せるはずです。

中倉中倉

まずはサッカーが変わることで、一人ひとりが輝ける社会に変わっていけるといいなと思いますね。