SCAN DA CAN
平川 真一郎
BUSINESS/DIGITAL
TRANSFORMATION
シニア・アナリスト。「SCAN DA CAN」のプロジェクトリーダーとして、開発マネジメント、セールス、電通グループ各社との連携、特許取得などを担当。普段の仕事はソリューションの開発・導入支援、AI/IoTの活用など。学生時代の専攻は経営学。電通には中途入社。子どもと過ごす時間が何よりの楽しみ。
阿部 萌子
BUSINESS/DIGITAL
TRANSFORMATION
データアナリスト。「SCAN DA CAN」の導入、AIの精度向上や新機能の導入などを担当。普段の仕事ではクライアントのマーケティング活動の効果検証や、データ活用支援などを行う。学生時代の専攻は建築学。最近の趣味は登山と写真。
熊田 希和子
BUSINESS/DIGITAL
TRANSFORMATION
データアナリスト。英語と中国語のスキルを生かしたく、「SCAN DA CAN」のグローバル展開を推進。普段の仕事では、データ分析を通じて、クライアントのマーケティングの課題解決を支援している。学生時代の専攻は地理学。好きなことは、アートと写真、テクノ、点心。
INTERVIEW /01
犬タビュアー
平川
きっかけは、クライアントである飲料メーカーさんとの会話の中にあったんです。従来の「シールを集めてハガキに貼ってもらう」というお客さまに負担を強いる形式の応募方法ではなく、お客さまが感動するようなキャンペーンを設計する方法を模索されていました。たしかに、本来集めて楽しいはずのキャンペーンの応募が「楽しくない」行動になってしまっているとしたら、そこに課題があるんじゃないかと。
平川
まさにそうですね。営業、開発などさまざまな部署のメンバーが集まって、広告やマーケティングに閉じず、幅広い領域で日頃からクライアントと対話を重ねているからこそ、課題をヒアリングできたのだと思います。
阿部
私たちが所属するデータ・テクノロジーセンターの知見を使って、新しいデジタルソリューションを開発すれば、その課題が解決できるんじゃないかなと。そうやって生まれたのが「SCAN DA CAN」でした。商品を撮影するだけで応募できる、という体験が直感的ですし、写真を撮った後に、スマホ上でアニメーションやゲームを楽しんでもらうこともできるので、ブランド資産を生かした演出も付加できる。社内のさまざまな部署と協力しながら開発し、今では電通と電通デジタルが特許を取得しています。
平川
一般のユーザーの方々にも好評なのが、まさに、商品を撮影する際に、その商品の世界観を体感できるアニメーションが出る仕掛けをつくったところですね。キャンペーン参加者へのアンケート調査で、ブランドへの好意度が高まったという結果も出ています。そういった結果も受け、今は、各商品の世界観をもっと魅力的に表現するにはどうしたらいいか、社内のクリエイティブチームと議論しています。
阿部
あとは、ユーザーと商品が向き合う「時間」にもこだわりました。あるキャンペーンでは、缶を読み込むとできるゲームをつくったのですが、ユーザーひとり当たり合計でなんと約9分間も参加してくれたんです。これは、他の販促キャンペーンではなかなか実現できない時間です。普段、食卓などでビールに意識が向くタイミングは飲む時や注ぐ時で、その時間は長くても1分程度だと思います。そこで、「ビールを飲む」という行為を、「ブランドの世界観を感じてもらいながら飲む」という行為に変化させました。商品と正面から向き合ってもらう時間を長く確保することで、日常生活において、商品、ひいてはブランドを意識するきっかけ作りができたらと考えたんです。
平川
特に、「ビール」や「飲料」のようなブランドスイッチ(ある会社の製品を愛飲していたが、競合他社の同じ製品に乗り換えてしまうこと)が激しい市場において、こうやって商品と向き合う時間を作ってブランドを印象づけることは、また次も同じブランドを購入しようと思ってもらうことにつながるので、クライアントにとってもメリットが大きいと考えています。その点にもこだわって、開発を進めてよかったなと思います。
阿部
結果的に、導入してくださった多くのクライアントからご好評の声をいただいています。実際に、Xなどでもスキャンの結果を投稿してくれるユーザーも見かけますし、多くの人に触れていただいている実感がありますね。
SCAN DA CANの仕組み。詳細はこちら。
INTERVIEW /02
平川
ありがたいことに、「SCAN DA CAN」は海外拠点からの需要が高まっており、熊田さんには、グローバル展開の準備を中心になって進めてもらっています。
熊田
はい。グローバル展開に向けて、電通グループの海外拠点へのセールス、特許取得、契約締結などを進めているところです。
熊田
いえ、全く(笑)。AIやデータには興味はありつつも全く知見はなく、まさか仕事として担当するとは思ってもいなかったのですが、初任配属でデータ・テクノロジーセンターに配属となり。自分にできることを探して、元々持っていた英語のスキルや大学生から学び始めた中国語を生かしながら、このプロジェクトに参加しています。その結果、興味があったAIやデータ領域について学ぶことができているので、よかったなと思っています。
熊田
そうですね。データ・テクノロジーセンターは、中途入社の方も多く専門領域に対して経験豊富な方々から最先端の知見を得られる一方で、私のような若手の意見やアイデアも積極的に受け入れてもらえる雰囲気もある。そういう意味で、学びの場でもあり、自分を生かせる場でもあります。
阿部
そのバランスがいいですよね。私自身も、データ系の部署に配属された後、自分のバックグラウンドである「建築」と関連したデータ領域の仕事がないかなと探して、手を挙げたら位置情報データを扱うプロジェクトに参加することができたという経験があります。
平川
私が中途入社だから特に感じるのかもしれませんが、電通の人たちって新しい意見や新しい取り組みに対して非常に前向きですよね。自分の興味のあることに向き合っている多様な人が、多様な知見を持ち寄りながら、プロジェクトを開発していく。それが、データ・テクノロジーセンターらしさでもあるし、電通らしさなのかなと感じています。
阿部
みんな、部署など関係なく、とてもフラットな関係性ですよね。「SCAN DA CAN」のシステム開発時も、このチーム以外の多くの人に協力してもらいました。AIの精度を上げるために、さまざまな角度や明るさ、場所で撮影した何百枚もの教師データが必要だったので、自宅で撮影してもらったり……。かなり手作り感のある作業でしたが(笑)。
平川
幅広い人材がいるからこそ、クリエイティブ、キャンペーンのランディングページ作成、広告展開まで一貫して行える体制が実現できる。さまざまなバックグラウンドを持つ人がいる、というダイバーシティが電通グループの良さですよね。
INTERVIEW /03
熊田
先ほどもお話しした通り、今は海外展開にも力を入れていて、来年以降は中国を始め、アメリカ、アジア、ヨーロッパでの展開を目指しています。現地に駐在している電通社員を通じて、クライアントへの提案を進めていく予定です。海外でも特許を取得して、どんどん展開していきたいですね。
平川
開発面では、缶飲料だけでなく、ペットボトルや食料品、居酒屋や料理店など、さまざまなカテゴリーでの活用を考えています。販売拡大の面では、複数の飲料メーカーで導入していただいているので、他のメーカーにも広げていきたいです。最終的には、スーパーやドラッグストア、コンビニに並んでいるメーカー全部が「SCAN DA CAN」を使っているという状況が夢ですね(笑)。
阿部
ブランド横断型のキャンペーンも行いたいと思っています。例えば、ビールだけでなく、他のお酒や飲み物など、複数の商品を横断した「SCAN DA CAN」のキャンペーンを行えたら面白いですよね。
熊田
たとえば、「SCAN DA CAN」のシステムでは、複数の商品を同時に識別することも技術的には可能です。なので「ビールと酎ハイで乾杯すると応募できる」「このビールと、このおつまみを一緒に食べると応募できる」みたいなキャンペーンの設計も今後ぜひやってみたいですね。
平川
アナリストの視点から言えば、「SCAN DA CAN」は飲む瞬間に写真を撮ってもらうサービスなので、リアルな「飲む瞬間」のデータを、ユーザーに許諾を頂く形で取得ができます。だとしたら、その飲用データの活用の仕方にも、かなりポテンシャルが秘められているなと思います。それを分析することで、もっともっと見えてくるものがあるんじゃないかなと。
阿部
例えば、飲む時間帯やタイミング、頻度などのデータを掘り下げることで、今までとは違う解像度で、ユーザー像を読み解くこともできるかもしれないですよね。
平川
まさにそうです。購買データにはさまざまな種類がありますが、購入後、「今まさに飲んでいる」というリアルな飲用タイミングのデータはなかなかないんです。どういったタイミングやシーンで飲まれているのかが分かれば、ユーザー像をつかむことができ、次のキャンペーン施策へ活用できる。そこにチャレンジできれば、「SCAN DA CAN」の新しい強みになると考えています。
INTERVIEW /04
熊田
入社してから、この仕事を通して、データが持つ可能性を知ることができました。その可能性を生かして、データを預けてくれる人が、安心して、かつ、データを預けたことによるメリットを感じることのできるようなデータの使い方を考えていきたいです。将来的には、社会的意義の高いプロジェクト、例えば「フェムテック」のような分野でデータを活用することにも挑戦してみたいと思っています。でもまずは、今取り組んでいる「SCAN DA CAN」のように、日本で開発した独自のデータソリューションを、もっと海外に紹介・展開していきたいですね。自分の得意なことを生かしながら、自分にできることを探っていきたいです。
阿部
私は、自分のバックグラウンドを生かした仕事にもっと力を入れたいと思っています。直近では、「位置情報」と「IoT家電」のデータをうまく使いこなすことが目標です。最終的には、先ほども話した通り学生時代は建築を専攻していたので、まちづくりの仕事にも携わりたいんです。位置情報や人流のデータを活用しながら、何か新しいことができないかなと常に考えています。
平川
DX(デジタルトランスフォーメーション)と叫ばれてはいますが、電通の社内でも世の中においても、まだまだデータの有効活用が進んでいない部分がたくさんあると思います。クライアントから直接話を聞いたり、さまざまなステークホルダーとのつながりがあることを生かしたり、電通だからできる方法で、ソリューション開発に取り組んでいきたいです。「SCAN DA CAN」のような開発事例を他の分野でも作っていけたらいいですね。
平川
AIの領域は特にそうですが、日々のテクノロジーの進歩で、いまの自分にはない知識や能力はどんどん増えていきます。でも、いまの自分にないことに自覚的になってはじめて、周りの人に頼れるようになりますし、そうやって人に頼ることによってプロジェクトは前に進んでいく。新しいことへの探究心や好奇心、自分が作ったものを世に出したいという思い、そして何かをやり遂げたいという意志さえあれば、新しいものを生み出す原動力はなくならないんじゃないかなと僕は思っています。
阿部
たしかに新しいシステムや分析手法の開発は大変な仕事ですし、私自身、周りの優秀さに圧倒されることもあります。でも、そういう環境だからこそ、新しいものが生まれるんだと思います。何かを生み出したいという目的があるなら、「楽して良いものは作れない」ということを、日々の業務を通じて実感しています。
熊田
最初はデータについて何も知らないまま配属されて、周りの優秀さに驚きました。でも、そんな環境だからこそ、分からないことはすぐに聞けるし、新しいことも学べます。仕事の中で「新しい考え方だ!自分にはこれが足りてない!」と気づく体験ができることが、すごくいいなって思います。日々の小さな成長や発見を大切にしながら、頼れる仲間と一緒に新しいものを作りつづけていきたいです!