セブン-イレブン・ジャパン | クライアントと共に事業変革に挑む

CHALLENGE

PROJECT

セブン-イレブン・ジャパン

クライアントと共に事業変革に挑む

あらゆる企業で、DX(デジタルトランスフォーメーション)が求められる時代。セブン‐イレブン・ジャパン(以下、SEJ)は、ダウンロード数2200万超の「セブン-イレブンアプリ」やそれにひもづく購買データを起点に、CRM(顧客関係管理)を推進し、取引メーカーがマーケティングPDCAをできる仕組みを整備。2022年9月には、「リテールメディア推進部」を新設し、マーケティング事業に本格参入してきた。伝統的な大企業ほど事業変革は難しくなるといわれる中で、日本最大級の小売り(リテール)であるSEJは、どのようにして大規模なDXを実現したのか。電通からSEJに駐在し、SEJの社員と共にこれらの取り組みを推進してきた大多・能登の2人に話を聞いた。

本気でクライアントに伴走し、
データから価値を生み出したい。

INTERVIEW

  • 大多 涼介
    大多 涼介
    BUSINESS PRODUCE
  • 能登 康之介
    能登 康之介
    DATA / TECHNOLOGY
INTERVIEW /01

日本最大級の小売りが持つデータを、いかに活用するか。

━━ まずは、なぜ、クライアントであるSEJに駐在し、SEJのような大企業のDXを推進するプロジェクトに関わるようになったのか、教えてください。

大多大多

そもそもは、僕がビジネスプロデューサー(BP)としてSEJを担当していたのが始まりです。それまでは通常の広告関連の業務を行っていたのですが、クライアントからのオーダーを受注するだけの関係に課題を感じていました。デジタル化が進む時代だからこそ、もっと広域的な課題解決の提案をしたいなと。ちょうどその頃に、SEJも新しい事業の柱をつくりたいと悩まれていたんです。そんなタイミングで、「アプリや購買データを中心としたCRM体制を立ち上げ、One to Oneの顧客育成を推進するとともに、その体制を活用したマーケティング事業である“リテールメディア”を立ち上げませんか?」と提案させてもらったことで、このプロジェクトが立ち上がりました。

能登能登

僕は、大学院の博士課程でデータ分析とその応用領域を専攻し「データサイエンティスト」として電通に入社しました。入社して2年くらいがたち、電通の仕事に慣れ始めた頃、大多にこのプロジェクトに呼ばれました。

大多大多

プロジェクトの推進のためにはデータ分析だけでなく、データや施策に関する環境開発、アプリのUI/UX改善、データ起点のPDCA設計など幅広い領域の知見が必要になると考え、能登をチームに迎えたんです。

━━ 基本的な質問ですが、「リテールメディア」とは、なんでしょうか?

大多大多

定義はさまざまありますが、小売店のお客さまの購買データや小売店アプリの利用ログなどの行動データなどを活用して広告を配信する仕組みのことです。さらに、店頭サイネージなどの小売店独自の顧客接点を広告媒体(メディア)としても活用しています。購買データを使った精緻なターゲティングによる広告やクーポン配信や、サイネージを用いたマス的な告知ができ、世界でも注目されているマーケティングソリューションです。

━━ 小売業であるSEJが、顧客データを活用したマーケティングを必要としていたのはどのような理由からでしょうか?

大多大多

これまでは店舗を増やし、いい商品をつくり続ければ、売り上げが伸び続けるという方法が成立していました。しかし、いうまでもなく、日本市場の人口は減少しており、店舗数もこれまでの勢いで伸び続けることは難しいかもしれない。としたら、成長を続けていくためには、小売業だから持てるデータを活用する方法を考える必要があったのだと思います。

能登能登

例えば「セブン-イレブンアプリ」も、僕たちが携わる前から存在はしていましたが、その活用にはクライアント側としても課題感を持っていました。そこで、アプリを通じて取得できるデータを、どのように活用できるか、というコアアイデアから一緒に検討をさせていただいた上で、SEJに常駐しながら、CRMプロジェクトの推進やリテールメディア事業の立ち上げに関する具体案を作成していきました。

  • セブン-イレブンアプリUXの変遷

  • リテールメディアとは?

INTERVIEW /02

役割を超えて、クライアントと並走する。

━━ 二人はクライアントに駐在しながら、プロジェクトの中心メンバーとして中からサポートしていたとのことですが、その間に「リテールメディア推進部」という部署が新設されていますね。

大多大多

「電通の人」として外部から関わるのではなく、クライアントの事業パートナーとして仕事ができていることは、とても大きな意味がありました。「これで本当にモノが売れるのか?数字にできるのか?」と、クライアントと同じ目線で悩むからこそ、結果にコミットすることができる。そんなスタンスで仕事ができることには充実感がありますし、自分のキャリアとしてもチャンスだと感じています。

能登能登

最初に「SEJに駐在」と聞いた時は正直驚きました(笑)。でも、「中の人」として、クライアントのさまざまな部署と直接交渉して、データや施策環境の開発に加えて、チーム体制も整備をしながら、より良いプロジェクトにしていくという仕事はデータサイエンティストに与えられた立場や役割としては最高の環境であり、非常にやりがいを感じます。本来、私たちはサポートをさせていただく立場ですが、プロジェクトを進めながらリテールビジネスのことを、たくさん勉強させていただくことで、プロジェクトが地に足をついた形で進んだと思っています。クライアントの皆さんには本当に感謝しています。

━━ 具体的に、クライアントの中でどのように動いているんですか?

大多大多

今回立ち上げた「リテールメディア推進部」の責任者と僕で、毎週1on1をしています。日々アップデートされる情報から課題を見つけ出し、その場でアイデアを出しながらディスカッションすることが多いですね。とにかくスピード感が大切なので、完璧な提案書に仕上げる前に、考えたことをぶつけます。その場で出たアイデアは、すぐ能登に相談し、実現に向けて動き出します。

能登能登

大多と僕は、ビジネスプロデューサーとデータサイエンティストというそれぞれの肩書を、あまり意識せずに仕事をしています。大多はデジタルプロモーションに携わっていた経験があるので分析アイデアや施策プランをどんどん出しますし、僕も、クライアントから直接相談を受けた上で、クライアントの他部署や電通グループ各社とプロジェクトチームをつくったりもします。大企業を変革するためには、会社や部署を超えてさまざまな人に働きかけ、調整する必要があるので、肩書や立場にこだわっていたら、今回のプロジェクトを推進させるのは難しかったと思います。

大多大多

短期的な利益ではなく、中長期的に武器になるビジネスを一緒につくる経験ができるのは、電通ならではですよね。電通はクライアントのパートナーとして、共に成長しながら並走する。そうした動き方ができる風土があるのだと思います。

能登能登

また、このプロジェクトを進める上では、ここ数年で電通が社内で粘り強く進めていた、デジタル領域におけるソリューション開発や活用のノウハウが、決め手になったと思います。DMP等のデータ環境の開発、アドテクノロジー活用、データクリーンルーム、個人情報保護等に関する知見を持つグループ各社の専門人材を適切に組み合わせて、並走させていただくことで、電通にしかできないようなサポートができたと考えています。

INTERVIEW /03

クライアントの課題解決が、別のクライアントの課題解決につながっていく。

━━ DXの結果、クライアントにはどのような変化がありましたか?

大多大多

最初は、DXを起点として、クライアントの事業変革(CRMの推進やリテールメディア事業の立ち上げ)を進めているつもりでした。でも結果的に、変わったのはクライアントだけではありませんでした。

━━ どういうことでしょう?

能登能登

リテールメディアをうまく活用するためには、「リテール」「メーカー」「電通」の三者の協力が不可欠です。この三者が、「データ」という共通言語を持つことで、目線をそろえた中長期の取り組みに関して対話できるようになったと考えています。

大多大多

データを活用できていない時は、電通が短期的で的外れな提案をしてしまったことも正直ありました。リテールとメーカーの間に、「データの有無」という力関係が発生してしまい、健全な取引ができなかったこともあったと聞きます。しかし、リテールメディアをきっかけに、データが適切に共有される状況が生まれ、データが企業をつなぐ架け橋になったと感じています。結果的に、お互いがWin-Winで利益を得るための意見を、ピュアに交わせる関係に変わっていきました。

能登能登

電通としても、SEJリテールメディアを生かして、メーカーのマーケティングに対する新しい方向性を示すことができるようになりました。大げさかもしれませんが、リテールメディアは、マスメディア、デジタルメディアに続く、第3のメディアとしての可能性を秘めていると思いますし、電通としてはそれらを組み合わせることで、新しい顧客体験をつくり、クライアントの課題解決をサポートしていければと考えています。(電通にとってのクライアントである)SEJが新規事業を立ち上げることをサポートすることによって、(電通にとっての他のクライアントである)メーカーの課題解決の手段を生み出す結果となった、という意味では、極めて電通的な仕事ができたと思える仕事です。

大多大多

電通第4代社長の吉田秀雄は、テレビの黎明(れいめい)期に、テレビ局に優秀な人材を送り込み、共にビジネスを育てたそうです。電通には、昔からクライアントと共にビジネスを起こし、共に育てるDNAがあったんです。電通が抱える6000社以上のクライアントと、これからもビジネスの新しい関係をつくっていきたいですね。

  • 広告と販促の統合を行い、すべての関係者がパートナーとして、マーケティングを高度化していくリテールメディア

INTERVIEW /04

スキルだけでは、価値は生まれない。

━━ お二人は、今回の仕事に関わることで、どのような発見がありましたか?

能登能登

僕はデータを専門にしていますが、改めてデータ分析は単一のスキルに過ぎないと思いました。当たり前ですが、大事なのは、「そのスキルでどんな価値を生み出すか」ということ。そして、価値はスキル単体で生まれるものではなく、その周辺との掛け合わせによって初めて生まれるものだからです。
データ分析で言えば、人の質も量も電通より優れた企業はあります。でも、そのような企業が、その強いスキルを十分に生かしきれていない例もたくさん見てきました。その点、電通には大きな影響力を持つクライアントがいて、さまざまなメディアやコンテンツ企業のビジネスのサポートをさせていただいております。データ分析の知見もそこに掛け合わせることで、レバレッジが効き、大きな価値を生み出すことができると考えています。そういった意味では、「専門性を生かして社会を動かしたい」と考えるようなタイプのデータサイエンティストには、電通は理想的な環境だと思っています。データを通してクライアントの広義のビジネス課題に向き合える楽しさは、電通で働く醍醐味(だいごみ)だなと。
これまでに「データ等の専門スキルを生かして働きたい」という学生にもたくさん会いましたが、やはりデータ分析の知見だけで解決できるビジネス課題ってほとんどないです(笑)。課題を解決するためには、ビジネスモデルや商品・サービス、そしてお客さんとの関係性をそれぞれ適切な形で変革していくことが必要です。その最適な形を考えたり、意思決定を直接的・間接的にサポートするためのツールがデータだと思っています。逆に、ここではデータを使う必要はないという提案もありえると思いますし、そのバランスの妙が電通的なデータ領域におけるクリエイティビティだと考えています。

大多大多

僕たちが取り組んでいるのは、電通の中でもまだ特殊な領域なので、これから仲間を増やしていきたいです。未知な領域に進むのって、こんなにワクワクするんだなと改めて思いました。結果が予想できない仕事でも、面白がって前向きに楽しんでくれる人が入社してくれたら、とても心強いなと思います。特にスペシャリストとして電通に入ろうと思っている方には、スキルだけじゃなくて、クライアントの課題に心から寄り添うという姿勢を大切にしてほしいですね。何よりもまず、相手や仲間をリスペクトする気持ちが、先駆者として一番大事だと思っています。