M-1グランプリ | クリエイティブ×メディアで、どこまで熱量を高められるか

CHALLENGE

PROJECT

朝日放送テレビ M-1グランプリ

クリエイティブ×メディアで、どこまで熱量を高められるか

ひとつの番組の域を超え、一大コンテンツとして近年ますますの盛り上がりを見せているM-1グランプリ。Creepy Nuts、宮本浩次、ウルフルズの楽曲とのコラボレーションでつくられるプロモーションビデオは風物詩になりつつある。その動画をはじめ、M-1を唯一無二のお笑いコンテストにするべく、メディアとクリエイティブのコラボレーションに力を注ぐ電通のM-1チームがある。彼らは、何をモチベーションに、何を目指してM-1に向き合っているのか。チームを代表して高木・有元・水本・上田に話を聞いた。

最高の大会を、
最高の熱量で届けたい。

INTERVIEW

  • 高木 智広
    高木 智広
    MEDIA
  • 有元 沙矢香
    有元 沙矢香
    CREATIVE
  • 水本 晋平
    水本 晋平
    CREATIVE
  • 上田 美緒
    上田 美緒
    ART
INTERVIEW /01

すべては、「好き」から始まった

━━ そもそも、有元さんは、かなりのお笑い好きだとか?

有元有元

そうですね。特にM-1グランプリ(以下、M-1)は、人生で一番好きなコンテンツといっても過言ではなくて。2001年のM-1の第1回大会には、一般応募の「会場審査員」という制度があったのですが、それに審査員として参加していたくらいです(笑)。

━━ いわゆる「ガチ勢」ってやつですね。

有元有元

はい(笑)。だから、初めて朝日放送テレビさんとお会いして、ラフにブレストする機会があった時には、M-1へのあふれる想いを企画に詰め込んで持っていきました。すると、気持ちが伝わったのか、M-1チームに入れてもらえることになったんです。一緒に仕事するスタッフも、お笑い好きがいいなと思って、水本を誘いました。

水本水本

僕も大阪出身なので、M-1は本当に大きな存在で。2001年からのM-1初期の10年間は、僕が小学4年生〜大学1回生。優勝した芸人さんたちが、一夜にして人生が変わる瞬間をリアルタイムで目撃して、憧れずにはいられなかったですね。そんな大会が復活して、仕事として微力ながらも貢献できるとしたら、なんてうれしいことだろうと思って、参加させてもらいました。

━━ この仕事に関わる上で、お笑い好きであるかどうかって重要ですか?

有元有元

私はふだんからコンテンツに関わる仕事が多いんですが、M-1に限らず、いつも感じるのは、「好きに勝る技術はない」ということ。好きの度合いに差はあっても、好きという気持ちがないと、コンテンツのファンの気持ちを理解できないし、大きな話題をつくることもできません。個人的には、コンテンツの仕事をする上で、「好きであること」は必要条件な気がしています。

上田上田

私も、ビジュアルをつくる時は、広告のプロとしての感覚以上に、ファンとしての感覚や気持ちを大切にしていますね。私もお笑いは好きでしたが、それにしても有元さんの愛は異常です(笑)。

高木高木

僕は、実は、M-1に挑戦したことがあるんです。

━━ (一同)え!?

高木高木

2004年に。一回戦であっさり負けましたけど(笑)。だから、改めてこの仕事で久々にM-1と向き合えて楽しかったですよ。

INTERVIEW /02

「M-1にはこうあってほしい」という想い

━━ そもそも、M-1の課題はどういうところに?

有元有元

初年度は「若年層の視聴率アップ」でした。それで2018年に実施したTikTokさんとの連動企画がうまくいって。結果、2年目からは全体のコミュニケーションを任せていただけることになりました。そこからは、より大きな視点で、自分たちが理想とするM-1らしさを、世の中に対してどう伝えていくかを考えるようになりました。

━━ これまで六本木駅の「歴代王者展」など、さまざまな施策を展開されています。2022年はどんな施策を?

有元有元

「M-1感謝列車」と銘打って、Osaka Metroの御堂筋線の車両をジャックしました。関西は毎年視聴率が高いので、関西のファンに向けて、毎年観てくれてありがとうと、感謝を伝えることをしたいなと。

  • 御堂筋線をジャックした「M-1感謝列車」

  • 関西人ならではの「M-1あるある」が並んだ

有元有元

車内アナウンスも、M-1の決勝で毎年ナレーションを担当されているナレーターの方々に読み上げていただき、M-1仕様にしました。収録に立ち会ったのですが、目の前であの「エントリーナンバー!」を聞くことができ、長年のファンとしてはとても貴重な経験をさせていただきました。

━━ 「大阪」で施策を展開することには、どんな想いがあったのでしょうか?

上田上田

例年、SNSを見ていると「どの広告も東京ばかりでずるい!」というような書き込みがあって。そうした世の中の声も拾って、「M-1感謝列車」だったり、梅田駅で屋外広告を展開したりと、M-1に対する熱量が高い関西の方々にも楽しんでいただけるような施策にも注力しました。

有元有元

M-1は資産がたくさんある番組であることにも、改めて気付かされました。ナレーションの声がコンテンツになったり、毎年積み重ねてきたからこそ育っている番組の強いアイコンがいくつもあるので、プロモーションが考えやすい。おかげで広告と番組も一体化しやすく、本当にすごい番組だなと思います。

━━ M-1は広告を楽しみにしてくれている方も多いですよね。

水本水本

プロモーション動画も、いってしまえば、ただの番宣映像(=広告)にすぎないのですが、ありがたいことに毎年の風物詩として楽しんでいただけるまでになりました。2022年は、昼の12時に「本日20時に公開します!」と事前告知をしたところ、楽しみにしてくださっている方々が次々と反応してくださって。まだ何も公開していないのに、SNSにうれしい声があふれていて。公開直前「この期待値を超えられるんだろうか……」と不安に感じて、震えるほどでした。こんなことは普通のCM公開じゃありえない体験なので、やっぱり特別な仕事をさせてもらっているなと感じます。

  • 楽曲とコラボしたPVは、毎年の風物詩となっている

  • 2022年はウルフルズの「暴れだすV」とコラボした

━━ ファンの方の熱量に支えられて成立しているんですね。

水本水本

M-1運営に携わる皆さんの本気度や誠実さを、映像の力で世の中へ届けるお手伝いができているのは、とてもありがたいことだなと思っています。また、動画のコメント欄ではたくさんのファンの方々が熱い想いを書き込んでくださって、もうこれ自体がプロモーションになるんじゃないか、というくらい、みんなのM-1に対する熱量や愛が可視化された場ができあがっていて。こうしてM-1のブランド価値を高められていることは、すごく光栄に感じています。

上田上田

同じく、決勝の地・六本木駅のエスカレーターで展開している屋外広告も風物詩になりつつあります。歴代王者の写真をずらっと並べてM-1の歴史を振り返ったり、2022年は錦鯉さんでジャックしたり。2023年は、決勝がクリスマスイブということもあり、前年王者のウエストランドさんと組んで、アンチクリスマスをテーマに広告を展開しました。「イブに外でデートするより、おうちでM-1を見てね」と、あの手この手で言うシリーズです(笑)。こういう屋外広告は、恒例の場所でやり続けることで、みんなが毎年来られる「M-1の名所」になるといいなと思っています。

  • 六本木駅構内に掲出された2023年のポスター

  • 放送日にちなみクリスマスをテーマに広告を展開した

水本水本

どの企画も、真ん中にあるのは、出場する漫才師へのリスペクトですよね。強烈な原体験を持つ一人のM-1ファンとして、どんな企画にも「M-1はこうあってほしい」という想いで取り組んでいます。

━━ 2023年のキービジュアルも、公開されましたね。

有元有元

キービジュアルは、毎年総合演出の方の想いを伺い、それを私たちが言語化する流れで制作させていただいています。2023年は、「やっぱりM-1はとことんストイックに面白い漫才を追求する大会でありたい」という想いを伺いました。近年、エントリー数が1,000組単位で増えていて、全体のレベルも信じられないほど高く、準決勝までくると、全組が爆笑をとるくらい面白い。誰も落とせないような状況なんです。決勝に進むには、もう「面白い」だけでは足りない。さらに決勝で優勝するためには「面白い」の、その先の先に行かないといけない。現場にいると、その場が割れるほどの爆笑が起きるんです。爆笑よりもさらに大きいエネルギーがそこにある感じで。それこそが、M-1のすごみなんじゃないかと皆さんと話して、「爆笑が、爆発する。」というキャッチコピーを掲げました。

上田上田

ビジュアルは毎年、前回王者を出すのが恒例になってきています。2023年もそれにならって、ウエストランドさんに出ていただきました。王者たちのキャラを表現しつつ、M-1ならではの大きな熱量やインパクトを大事にしています。今回はテーマに「爆発」という言葉があったので、笑いがドカンと弾けるような瞬間を表現したく、手筒火花をモチーフにしました。

  • M-1グランプリ2023の大会ポスター「爆笑が、爆発する。」

INTERVIEW /03

目指すは“お笑い界のスーパーボウル”

━━ M-1は、番組の合間に流れるTVCMもユニークですよね。

高木高木

そう言っていただけるとうれしいです。このクリエイティブチームとの協業をはじめ、ここ数年はM-1という番組そのものの価値向上にもチャレンジしてきました。将来的には、僕はM-1を“お笑い界のスーパーボウル”にしたいんです。

━━ “スーパーボウル”は、アメリカで最も視聴者が多いといわれる番組ですよね。ハーフタイムに流れるCMも、各ブランドが趣向を凝らして競い合っていて人気だとか。

高木高木

はい、まさにそんな状態を目指したくて。番組だけではなく、合間のCMを含め、「M-1という時間」すべてを楽しくしたいんです。そうすることで、番組のメディアとしての価値も高まる。実際、M-1の番組内で流れるTVCMの注目度は上がっています。

水本水本

僕は、M-1のプレミアムスポンサーさんのTVCMをつくらせてもらうことがありますが、大会を盛り上げるために、みんながあの手この手で、その日その時にしか見ることができないTVCMをつくる。お祭り感があってワクワクしますよね。2022年は日清食品さんと一緒に、他社さんのCMを完コピしたCMをつくったのですが、SNSで「CMもおもろい!」と話題にしていただいて。今年も各社どんなCMを用意しているのかも楽しみです。

高木高木

M-1で流れるTVCMを話題化することで、スポンサーであるクライアントさんにも注目が集まるし、何より見ている視聴者も楽しい。こうしたシナジーは、サッカーW杯やオリンピックなどのスポーツ分野の中継番組ではあるけれど、お笑い番組としてはM-1が唯一です。

有元有元

他社のプロモーションに刺激を受けたクライアントさんから、「次の年はこういうことをしてみたい!」と新しいチャレンジの種が生まれてくる。高木さんはじめ、ラジオテレビ局の方たちがクライアントさんを巻き込んでくださるから、すごくポジティブな流れができていますよね。その盛り上がりの土壌があるから、M-1の大会本体を担当している私たちも、毎年新しい企画にチャレンジできるんですよね。

━━ 最近のM-1はテレビだけではなく、配信コンテンツもたくさんありますよね。

高木高木

配信という形式が当たり前になりつつある時代に、朝日放送テレビの皆さんは、「M-1」をより広く世の中に届けるためのコンテンツの在り方を模索しています。大会の熱量が高まれば高まるほど、予選への関心が高まってくるので、配信コンテンツとして提供し、そこでのビジネスもわれわれはサポートさせていただいています。ただし、配信に関しても、出場者へのリスペクトを忘れず、芸人ファーストで行うのが、M-1です。

有元有元

一方で、配信時代に、同じ日にみんながTVに向き合って同じ番組を見る。みんながSNSで追いかける。そんなお祭り感がM-1の大きな魅力だとも思っています。毎年テレビにしかない価値を実感することができ、とても面白いです。

高木高木

地上波では、今年からM-1にある熱量を、翌日までに、ということで「速報!M-1ネクストデイ」という大会の裏側に焦点をあてた番組もはじまります。この時代に、地上波だからこそできる新しい挑戦をセールス含めてさまざまな側面で支えていきたいです。

  • 大阪・梅田駅に掲出されたポスター

INTERVIEW /04

M-1が教えてくれたこと

━━ プロジェクトがスタートして2023年で6年目。皆さんそれぞれの仕事に向き合う姿勢にも影響はありますか?

上田上田

チームの皆さんや、現場の芸人さん、スタッフさんの熱量を直に感じたことで、自分自身の熱量もグッと引き上げられた感覚があって。コンテンツを好きになればなるほど、仕事がどんどん楽しくなっていくことも、私にとっては新鮮な気づきでした。

水本水本

僕にとってこの仕事は、1年の最後に自分の仕事との向き合い方を見つめ直す機会になっています。「このネタで人生を変えてやる」という芸人さんの覚悟を見ると、「自分はそこまで強い想いで仕事に向き合えているか……」と問われているようで、身が引き締まるんですよね。来年はもっと頑張ろう!と。

有元有元

私は、「打ち合わせをもっと楽しくしたい」と思うようになりました。クライアントである朝日放送テレビの皆さんは常にボケるので、打ち合わせがとにかく面白い(笑)。いい空気はいい仕事をつくってくれます。関西人であることを忘れがちでしたが、私もふだんの打ち合わせから周りを巻き込む楽しい空気をつくりたいと、いつも勉強させてもらっています。

高木高木

メディア局で働く私にとって、クリエーティブチームと連携できたことは、大きな収穫でした。ラジオテレビ局×クリエーティブという布陣でこの先もいろんなことに挑戦していきたいですし、M-1を通して感じたこの可能性を、他のライブコンテンツにも広げられるように、今後も力を注いでいきたいです。